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繁殖戦略の進化と共存の進化群集生態学

森田 慶一 さん(理化学研究所数理創造研究センター / 総合研究大学院大学統合進化科学研究センター)

要旨

近縁種どうしの共存メカニズムは、長らく「共通資源の奪い合いによる少数派の種の排除」という競争排除則に基づいて説明されてきた。しかし近年、この古典的な理解は刷新されつつあり、「資源の奪い合いを伴わない」代替プロセスとして、繁殖干渉が注目されている。繁殖干渉とは、交配相手の誤認識によって繁殖成功が低下する現象であり、昆虫・哺乳類・鳥類・植物など多様な分類群で確認されている。特に、交雑が生じると、雑種が不稔あるいは低適応度であるため、群集内の正の頻度依存性によって少数派の種が排除されるうることが理論的に示唆されている。そこで、繁殖干渉で在来種と相互作用する外来種の定着は失敗しやすいと予想されるが、実際には定着に成功する例も少なからず存在する。

 

本研究では、外来植物の移入初期に注目し、定着成功の鍵となる形質として性配分と自殖率に注目した。外来植物の性配分がメス機能に偏ると集団増殖率は下がるものの、余剰の胚に他種の花粉が受粉することで干渉が緩和される可能性がある。また、自殖が進化すれば交雑自体を回避できる。これらの形質の在来種との差異が外来種の定着(つまり、在来種との共存)に与える影響を、数理モデルを用いて調べた。併せて、群集生態学 / 進化生態学の数理モデリングも紹介する。時間に余裕があれば、北海道大学での研究計画や今後の展望についても触れる。

 

>参考文献

Morita, K.*, Sasaki, A. & Iritani, R. (2025) How can interspecific pollen transfer affect the coevolution and coexistence of two closely related plant species?. Oikos DOI: 10.1002/oik.11133

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