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生物の右と左の仕組みをアフリカの鱗食魚で徹底検証

竹内 勇一 博士(北海道大学理学研究院 生物科学部門 行動神経生物学分野)

要旨

ヒトの手の構造に大きな左右差はない。にもかかわらず、片方の手をよく使う「利き手」がある。このような左右非対称性は、実に多くの生物で見ることができる。ただし、どのような左右差があるか、という現象の記載に関する報告がほとんどで、左右非対称性のメカニズムに関する研究は極めて限定的であった。その現状を打破する研究対象が、アフリカ・タンガニイカ湖の鱗食魚Perissodus microlepisである。このサカナは個体ごとに口部形態に左右差があり、左側の下顎骨が大きい左利きは獲物の左側から、右側の下顎骨の大きい右利きは獲物の右側から襲う。この明瞭な「利き」は、生態学や進化学の教科書にも紹介されている。私はこのサカナを実験系に初めて持ち込み、利きの至近要因(神経基盤、遺伝子、発達)、と究極要因(生態的機能、進化)の両側面から研究を展開している。今回のセミナーでは、最近明らかとなってきた、「利き眼」と「表現型可塑性」の2つのトピックを紹介するとともに、今後の方向性について議論したい。
参考論文:
Marubayashi N, Yasugi M, Takeuchi Y. Phenotypic plasticity drives the development of laterality in the scale-eating cichlid fish Perissodus microlepis. Evolution (in press)
Takeuchi Y. (2023) Developmental process of a pronounced laterality in the scale-eating cichlid fish Perissodus microlepis in Lake Tanganyika. Zoological Science. 40(2):160-167.

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