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哺乳類地域個体群の探求―成立史から動態、保全への展望まで
石塚 真太郎(東邦大学 学振特別研究員PD)
Abstract
ある地域に生息する同種個体すべてのことを地域個体群と呼ぶ。地域個体群は保全の単位として用いられるため、内部の動態や構造を理解することは重要である。しかし、哺乳類の地域個体群は広域に分布する多数の群れや個体によって形成されるため、個体識別や全域調査が容易でない。ゆえに多数個体の識別が必要となる群れ間の相互作用や、個体群全域の内部構造に関する知見が不足している。そこで発表者は、「個体識別がなされた隣接複数群」と「全域調査が可能な島嶼個体群」を対象として研究をおこない、哺乳類の地域個体群の理解に努めてきた。
研究発表の前半では、野生ボノボの隣接複数群の研究について紹介する。発表者は全個体識別がなされている隣接3群のボノボを対象とし、群れ内および3群全体の遺伝構造や、それに寄与する個体の群れ間移籍の傾向などについて明らかにしてきた。ボノボを例とし、地域個体群の内側で繰り広げられる相互作用の様子について紹介したい。研究発表の後半では、野生イノシシの島嶼個体群の研究について紹介する。発表者は香川県小豆島およびその周辺地域のイノシシのDNA分析を行い、海を越える移住の詳細や、個体群拡大の歴史について調べてきた。イノシシを題材とし、地域個体群の新生や拡大のプロセスについて議論したい。なお、研究発表では様々な調査地でおこなってきたフィールドワークの様子を紹介し、参加者との交流に役立てたい。
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