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シロアリ腸内共生原生生物群集の伝播ダイナミクス

稲垣辰哉(東京工業大学生命理工学院 学振特別研究員PD)

Abstract 

 微生物との共生関係は多くの動植物において知られ、共生微生物は宿主の生態・進化に大きな影響を与える。そのなかでもシロアリと木材消化を担う腸内原生生物群集は、1.5億年もの間維持されている絶対共生関係として知られている。同種のシロアリはほぼ共通した原生生物群集をもつことから、この共生関係はシロアリの巣内及び世代間において安定して維持されていることが考えられる。本講演においては、共生関係を維持する上で重要である、羽アリを介した次世代への伝播プロセスに着目した研究を紹介する。ヤマトシロアリのコロニーを採集し飼育実験を行った結果、羽アリでは腸内原生生物数がワーカーに比べて著しく少なかったが、その一方でワーカーでは存在量の少ないいくつかの種の割合が増加していることがわかった。この原生生物群集組成の変化が、原生生物種全体の伝達効率を向上させることがシミュレーションにより示唆された。これらの結果を踏まえ、シロアリが腸内原生生物群集を何世代にもわたり維持し続けてきた背景について議論したい。
 また後半では、実際の調査や実験の様子、さまざまな地方でフィールドワークを行なって感じたことなどをお話しさせていただければ幸いである

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