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母になると世界はどう変わる?― マーモセット・マウス・三児の母の感覚と行動 ―

矢野 沙織 博士(北海道大学)

要旨

 妊娠・出産・子育てというライフステージの中で、母親の体と心は大きく変化する。例えば、種内コミュニケーションに嗅覚を主に用いるマウスでは、非妊娠雌は交配相手としてより適した雄の匂いを好むが、妊娠後には雄の匂いを避けたり、雄の匂いで妊娠が中断されたりする。出産後には子を守って雄を攻撃し、子が独り立ちすればまた雄を求めるなど、同じ匂いに対する反応がライフステージに応じて劇的に変化する。
 ヒトの世界に目を向けても、つわり、味覚・嗅覚の変化、食嗜好や睡眠の変調、産後クライシスなど、妊娠・子育て期には未解明の現象が数多く存在する。私は、ヒト・小型霊長類マーモセット・げっ歯類マウスの間の共通点に着目し、こうした動物の妊娠・出産に伴う変化を調べることで、妊娠・出産が感覚や行動をどのように変化させるのか、またその神経内分泌学的基盤の理解を目指して研究を進めている。
 また、このテーマは私自身の母としての経験とも無縁ではない。夫との出会い、就職と結婚、3度の出産と職場復帰、研究への影響、子供と一緒の転職・引っ越し、研究・子育て以外にもやりたいことをやりたい放題やってきたこれまでの歩み。その過程での工夫や、周囲からの助け、時に生じた葛藤についても、研究の裏側にある物語として赤裸々に紹介したい。


研究室ウェブサイト:https://www.vetmed.hokudai.ac.jp/organization/physiol/
researchmap:https://researchmap.jp/saori_yano

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