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フィールドの両生類学:北海道に導入されたアズマヒキガエルの話を中心に

岡宮 久規 博士(ふじのくに地球環境史ミュージアム・主任研究員)

Abstract 

 侵略的外来種は捕食や競争、中毒などを通じて在来生物相に悪影響を与える。外来種には国外から導入された国外外来種と国内間で分布地域から非分布地域に導入された国内外来種がある。ブラックバスやアメリカザリガニなど国外外来種の侵略性はよく認識されているのに対し、国内外来種を扱った研究は少なく、導入リスクの認識も不足している。よって国内外来種の影響を把握することは急務である。

​ アズマヒキガエルは本州に分布する大型のヒキガエルで、ブファジェノライドと総称される神経毒を体内に保持している。本種は1900年代初頭から複数回北海道に導入され、函館や旭川など道内各地に定着している。特に1980年代に導入された旭川周辺ではその増殖が著しい。私の所属していた北海道大学北方生物圏フィールド科学センター岸田研究室では数年前から北海道の在来生物相に対する本種の影響評価に取り組んでおり、水槽実験下で在来の両生類幼生(エゾアカガエル、エゾサンショウウオ)にアズマヒキガエルの孵化胚を捕食させると中毒死を起こすことが明らかになった。研究室ではその後も本種の影響について、野外調査や操作実験、水族館との共同研究など様々なアプローチの研究を継続しており、アズマヒキガエルの毒の由来や、発生に伴う毒性の変化、自然下での在来両生類への影響の実態、影響の条件依存性、中毒死以外の生理的な影響など様々なことが明らかになりつつある。
 講演の第一部では国内外来種アズマヒキガエルについてこれまで分かってきたことを紹介する。第二部では自身の研究を振り返る形で、野外で両生類を研究することの魅力を紹介する。テーマの着想に至る経緯やそこでの苦労、論文では書かれない実際のフィールド調査の様子なども交えて、皆さんと議論をかわしながらざっくばらんに話したい。テレビ番組等で話題になったエゾサンショウウオ幼形成熟個体の再発見や登山ヒキガエルの話についても実際のフィールド写真や動画をお見せしつつ取り上げたい。

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