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食う―食われる種間関係が駆動する適応放散と多種共存―藻食魚と、ウオノエ

畑 啓生 博士(愛媛大学大学院理工学研究科・准教授)

Abstract 

 この世界では、すべての生物が直接または間接的につながりを持ち、多種多様な生物種からなる豊かな生態系が成り立っている。私は、なかでも食う―食われるという種間関係に主眼をおき、野外観察と遺伝子解析によって、これまで見逃されてきた種のレベルでの種間関係の特異性を紐とき、生物種間の相利共生関係や、共進化関係、種間関係が駆動する適応放散や、多種共存機構を研究してきた。サンゴ礁では、クロソラスズメダイが、なわばり内に自らが食べる食藻であるイトグサの一種を囲い込み、そのイトグサはクロソラスズメダイのなわばりのみを生息場所とする、ヒトと栽培植栽培にみられるのと同じ栽培共生が成り立っている。他方、アフリカの古代湖、タンガニイカ湖では、最近適応放散した近縁で生態的にも類似したシクリッド科魚類の多種が、数mのレベルで水深帯を使い分け、そこに生息する特異的なシアノバクテリアを利用して共存していることを明らかにした。日本列島を取り巻く近海では、ウオノエという魚類に寄生する等脚類が、新たな宿主魚への宿主転換と、深海から沿岸浅海域、淡水域へと侵出し、適応放散してきたことが明らかになりつつある。これらについて話題提供および議論させていただき、さらに他に取り組んでいる、生態系に基づく農業による淡水性魚類や二枚貝類とヒトとの共存についても議論させていただけるとありがたいです。

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