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行動生態学者は大胆さとして何を測定してきたのか?

酒井 理 博士(カリフォルニア大学 デイビス校 UC Davis 海外特別研究員)

Abstract 

 ここ20年ほどで、動物行動学では個体差の意義について議論が展開されてきた。特に、時間や状況を越えて一貫した行動形質は個性(Animal personality)として扱われ、そのパターンの説明を試みる仮説が提唱され、検証がつづけられている。なかでも、大胆さ(Boldness)は主要な行動形質の一つとして幅広い分類群の動物において測定されてきた。大胆さとは一般的に「リスクテイク傾向」として定義され、臆病-大胆という尺度において連続的なものとして扱われる。しかしながら、大胆さという用語の曖昧さは昔から問題視され、実際には様々な種類の行動がこの用語のもと一緒くたに扱われている。
本発表では、個性研究における大胆さを体系的に整理した文献調査を紹介する。3つの主要雑誌から268本の論文を精査した結果、大胆さの評価方法は大まかに3種類に区分され(捕食者への反応、人為攪乱への反応、新奇なものへの反応)、その割合は系統分類群によって異なることが分かった。また、同一個体を対象として大胆さの複数の側面を評価した研究は少なく、個性研究が見逃してきた一貫性の観点といえる。これに関連し、現在私たちが提唱を試みているFear Generalizationというコンセプトについても紹介したい。

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