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4種植物における送粉者サイズに応じた花サイズの山域間独立進化

田路 翼 博士(東京大学大学院理学系研究科 学振PD)

Abstract 

 山地で最も普通な訪花者であるマルハナバチ類は様々なサイズの種類が存在し、この種間のサイズの違いは花サイズの進化に密接に関連する。本研究では、集団毎に様々な種類のマルハナバチが訪れるオドリコソウ、キバナノヤマオダマキ、ヤマホタルブクロ、ラショウモンカズラの4種を用いて、花-昆虫サイズの局所的な一致を調べ、マイクロサテライト及びMIG-seq法による集団遺伝学解析を行った。それぞれの植物種で2-5山域の十数集団を調査した。その結果、どの植物種においても局所的な花サイズと訪花者サイズはよく一致していた。サイズマッチングが花の繁殖成功に強く影響することも一部の種で示唆され、訪花者のサイズが花サイズへの淘汰圧となることが示された。同じ山域内であっても大きなハチが訪れている集団では花サイズが大きく、小さなハチが訪れている集団では花サイズが小さかった。集団間の花サイズの近さと遺伝的な近さは関連がなく、単に山域間で遺伝的に分化するような遺伝構造が観察された。これらの結果は訪花者サイズに応じた花サイズの進化が山域間で独立して生じていることを示唆する。この現象は様々な分類群で共通しており、花形質の進化的な道筋として普遍性を持つことが明らかになった。
 発表後半やその後の懇親会では、まだ未発展の内容であるが自身が興味を持っている、花サイズと細胞サイズの関係性、花形質の同所的な二型の維持機構、透明な花弁についての議論をしていきたい。

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