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海産無脊椎動物ヒラムシ(扁形動物門:多岐腸目)の系統分類学

露木 葵唯 さん(北海道大学 大学院 理学院)

Abstract 

 日本の周辺海域は干潟や岩礁域といった多様な生息環境をもち、そこに棲む生物も非常に多様です。しかしながら、海洋生物の多様性理解はまだまだ途上にあり、未だ12万種ほどの未記載種が存在していると考えられています。特に普段耳なじみのない「マイナー」な生物は、研究者が少なく研究が大きく遅れています。

 ヒラムシは、このようなマイナーな生物の1つです。分類学的には、理科の教科書に出てくるプラナリアや、寄生虫のサナダムシなどと同じ、平たい体をもつ扁形動物に含まれます。基本的に自由生活性で、これまでのところ汽水・海水域からのみ発見されています。現在世界で1000種、日本から150種ほどが知られていますが、日本だけでもこの5年ほどで16種が新種として記載されており、種多様性の理解はまだまだ途上にあるといえます。私はヒラムシの多様性解明を目指して、北海道から沖縄まで日本各地の沿岸で採集調査を行い、様々なヒラムシを発見・研究してきました。調査の過程で、海岸に堆積する砂粒の隙間にすむ間隙棲のヒラムシや、サンゴやシャコなど他の海産無脊椎動物の体表面に特異的に棲む共生性のヒラムシなどが発見されており、ヒラムシにおける意外な生息環境の多様性が明らかになりつつあります。

 今回は私のこれまでの研究を中心に、ヒラムシに見られる形・生態の多様性や、進化史に関する考察について紹介したいと思います。本発表を通して、ヒラムシの研究材料としての魅力をお伝えできれば嬉しいです。

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