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ウニを取り巻く寄生・共生系

山守 瑠奈 博士(京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所)

Abstract 

 ウニ類は旺盛な藻類食者で、世界各地の浅海の生態系において重要な立ち位置にあります。一方で、ウニ類は魚類や甲殻類といった海洋の主要な捕食者を退ける鋭い棘を持つほか、一部の種は強靭な歯を用いて岩盤を削り、自らの身を守る巣穴を形成します。このような棘間や巣穴は小型ベントス類にとって貴重な隠れ家となり、磯場の生物多様性を底上げしています。ウニに身を寄せる寄生・共生者の中には特異的な種も含まれており、その中にはウニとの共生生活に特化した生態を獲得したものも見られます。例えば、ウニの巣穴に共生する貝類のハナザラは巻貝の系統にありながら、狭隘な空間での生活を容易にする低平な笠型の貝殻を獲得しています。また、有毒ウニ類の殻上に付着して生活するエボシガイ類のガンガゼタマエボシは、宿主ウニの殻を改変してゴール様の保護的な構造を形成するほか、棘の配列まで変えて自らの周囲に有毒棘を密集させ、勝手に防衛力を底上げします。
 このように、ウニの巣穴や体表には非常に興味深い寄生・共生系が展開されています。今回は、これまで和歌山県から沖縄までの暖海で研究してきたウニ類を取り巻く共生系を紹介し、ウニ類が生み出す生物多様性と、共生者の適応進化について議論したいと思います。

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