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「種間相互作用による地理的分断:新たな異所的種分化のシナリオを考える」
山口 諒(首都大学東京 理学研究科)
Abstract
適応放散は、生態環境と形質の多様化が結びついて起きる急速な進化のプロセスである。近年展開されてきた適応放散に関する研究の多くは、現時点における多様性パターンと生態的要因の間に見られる相関の解釈に依拠しており、過去の地理的隔離など非適応的な要因の貢献は見過ごされることが多かった。本研究では、非適応的な要因である地理的隔離が、地殻・気候変動などの非生物学的要因ではなく、生物学的相互作用によって起きる可能性を提案する。近縁種同士が相互作用することで互いに地理的に分断し合う新規プロセスを “Biotic Population Subdivision (BPS)”と名付け、仮説検証には、飛翔能力が欠如しているオオヨモギハムシ種群の野外集団を用いる。オオヨモギハムシの北海道集団は9つの形態ユニットに大別でき、未記載の複数種を含む“species complex”であるとされる。各形態ユニット間に食性の分化はなく、それぞれのタイプが生態環境との相関を持たずに複雑なパッチ状の分布を示している。本種を実例として、分子系統解析、実験室交配実験および数理モデルにより、連続的な地形空間で隔離集団の創出と種分化の反復を再現・解析し、BPSが野外で種分化の駆動要因の一つとなっていることを検証する。
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