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「利他行動の進化にかんする比較認知科学的研究:霊長類・ウマを対象として」

瀧本 彩加 博士 (北海道大学, 文学研究科)

ヒトは幼いころから他者への思いやりを見せる。また、困っている人を見ると、つい手を差し伸べたくなる。近年、ヒト以外の動物もまた利他的にふるまうことが、観察・実験研究から報告されている。しかし、利他行動の進化に影響した淘汰圧や利他行動の進化を支えた心理メカニズムはまだ明らかになっていない。

比較認知科学とは、ヒトと他の現生種の「こころ」の比較を通してその類似点・相違点を知り、「こころ」の進化の道筋を明らかにしようとする学問である。比較認知科学の分野では、近年ようやく、ヒト以外の動物にも利他行動があるかないかといった二者択一的な見方以外に、どのような状況でどのように利他的にふるまうのかという詳細な実験的検討も盛り上がりを見せるようになってきた。細かい問題設定・分析をすることによって初めて、利他行動とそれを支える「こころ」の働きにアプローチすることができる。そして、ヒトも含む複数の動物種を比較することによって、利他行動の系統進化についても議論することができる。

本発表では、まず、ヒト以外の霊長類における利他行動の実験研究について紹介し、その類似性や相違性について議論する。次に、利他行動の進化の道筋に関する有力な仮説(不公平感との共進化仮説・協力的養育仮説)やわれわれが提唱している利他行動を支える心理メカニズムについて紹介する。その上で、その心理メカニズムを明らかにするための個体差に着目した研究の展望を述べる。最後に、その展望と関連して、現在、集団飼育されている北海道和種馬を対象として進めている観察・実験研究についてお話し、皆さんといろいろと議論させていただきたい。

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