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「雌のチンチンを雄に挿入して交尾する虫のお話」
吉澤和徳(北海道大学農学研究院 准教授 )
雌がペニスを持つ昆虫「トリカヘチャタテ」の発見は,体長の20%にも達する ペニスのさらに刺だらけの見た目や,最長70時間にもわたって雌に拘束され続け る長時間交尾とも相まって,非常に大きな驚きをもたらした.多くの科学誌や一 般メディアで速報されたほか,Twitter では大騒ぎとなり,薄い本の作者には擬 人化され,2ch でもいじられ,さらにはドイツの18禁アダルトサイトでまで紹介 された.この発見は広く一般の興味を引いたのみならず,進化生物学的にも(も ちろん!)重要な意義を持つ.特に,雌ペニスに匹敵するような大規模な進化的 革新は動物界全体を見ても滅多に生じていないため,この構造は進化的新奇性の 研究対象として注目される.また雌ペニスを持つ生物は,性選択に関わる諸問題 に,通常の交尾器を持つ生物の研究とは全く異なるアプローチによる検証を可能 にすることも期待される.セミナーではこの新奇構造の発見と研究の経緯を紹介 するとともに,まだ論文にはなっていない部分,つまり雌交尾器のペニス化を可 能にした選択圧や前適応,雌ペニスの相同性,関連したその他の新奇構造,他の 生物での雌ペニスの存在の可能性などをお話ししたい.
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