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「Born/Bone This Way」

佐藤真理(北海道大学大学院歯学研究科 口腔先端融合科学分野)

私たちが地球上に生きていること、足で地面をしっかりつかんで生きていること、それを体のしんから感じているのが骨だ。頭のてっぺんから足の先まで、全身に張りめぐらされた骨は、骨細胞という生きた細胞がぎっしりつめこまれた生命感あふれる臓器である。骨細胞は幾本もの細胞突起をまるで手のように伸ばし、隣り合う細胞同士でその手をつなぎ合い、硬い骨の中でくもの巣のようなネットワーク構造を作っている。この骨細胞の手は私たちの体にかかる重力や運動刺激を感じ取るセンサーであり、メカニカルストレスをバイオロジカルなシグナルに変換して骨のみならず全身臓器をあやつっている。
そんなメカノセンサーである骨細胞を大量に埋め込んだ骨の中は空洞にくりぬかれ、そこには、日々血液を作り出し全身に血液を送り届ける血液工場が存在する。骨の中に血液工場があるのは何とも奇妙で不思議なことだ。なぜなら血液工場、すなわち骨髄が骨の中にやってきたのは私たちの祖先が水から陸に上がり6倍もの重力が体にかかった時である。人間でも、羊水に浮かんでいた胎児が産み落とされ、地に足をつけて重力を感じた時に骨髄は肝臓から骨の中に引っ越してくる。
骨が重力を感じている意味、血液が骨の中で作られる理由、私たちが今こうやってここに生きている不思議、時間も分野も既成概念も越えて、カラフルな骨の秘密を皆さんと一緒に味わいたいと思います。

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