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「自家受粉の進化と2種共存:
​ 送粉者を介した繁殖干渉が引き起こすEco-evoダイナミクス」

 
勝原光希 博士(岡山大学環境生命科学研究科)

Abstract 

 生物の多種共存機構の解明は生態学における中心的議題の一つであり、古典的には、 “種間でニッチを共有しないこと”が重要であると考えられてきました。顕花植物においては、2種が送粉ニッチ(いつ・どこで・だれに花粉が運ばれるか)を共有する場合、送粉者によって運ばれた異種花粉が柱頭に付着することが、花粉管の干渉や胚珠の天引きといった繁殖干渉を引き起こします。このような繁殖干渉は、形質置換によるニッチ分割や、競争排除を強く促進するため、送粉ニッチを共有する植物の共存は困難であると考えられていました。
 一方で近年、“自家受粉による自殖”が繁殖干渉の悪影響を軽減しうることを示唆する例がいくつか報告されています。発表者が行ってきた在来一年生草本ツユクサとケツユクサを用いた研究からは、特に、“先行自家受粉(花が開く前に蕾内でおしべとめしべが接触する受粉)”が繁殖干渉の悪影響を軽減しうることが明らかになりました。
 ここから、「先行自家受粉の進化が繁殖干渉下での植物2種の共存を促進する」という仮説の着想を得て、個体ベースモデルを構築し、様々な条件下でシミュレーションを行うことで検証を行いました。本セミナーでは、ツユクサとケツユクサの研究から明らかになったことを簡単に紹介し、個体ベースモデルから明らかになった、自家受粉の進化が駆動する、ニッチを共有する植物の新たな共存のメカニズムについてお話したいと思います。

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