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「雪が降ると白くなるウサギ、白くなれないウサギ
 ~全ゲノム解析による冬季毛色二型の遺伝基盤と進化史の解明」
 
木下豪太(京都大学 農学研究科)

Abstract 

  ある共通した環境への適応は、異なる生物種間で収斂進化を促す引き金となる。温帯以北の生物にとって季節に応じて激変する環境への適応は共通した課題であり、動物における「季節適応」は繁殖行動や代謝機能など様々な面で発揮される。中でも、積雪環境へ適応するための冬季白化はノウサギ・オコジョ・ライチョウなど幅広い系統で見られて有名であり、季節適応形質がどのように収斂進化したかを探る上で興味深い研究題材である。本セミナーでは、演者が現在進めているノウサギの全ゲノム解析について紹介する。ノウサギ属は世界で30種ほどが知られるが、北半球の積雪地域に生息する数種で、冬季白化が収斂進化している。特にニホンノウサギは種内に二型が見られ、おおまかに日本海側で白化型、太平洋側で年中褐色のままの非白化型が優占する。本研究ではドラフトゲノムの新規作成と集団ゲノミクス解析により、ニホンノウサギの毛色二型の責任遺伝子領域を特定することに成功した。さらに、このニホンノウサギの毛色二型は、大陸種とは異なる遺伝子で平行進化したことや、日本列島内で長期にわたって平衡選択で維持されてきたことも示された。このことは、第四紀の気候変動の下で環境適応形質の多型がどのように獲得、維持されてきたのかを理解し、さらに将来の気候変動に対する生物の応答を予測する一助になると期待できる。

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