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「地理的変異から見えてくる甲虫オサムシの自然史」

 

奥崎穣(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

Abstract 

  オサムシ(鞘翅目オサムシ科オサムシ属)は旧北区に広く分布する大型の捕食性昆虫です.いずれの種も後翅の退化により飛翔できず,地面を徘徊して餌や異性を探します.この移動力の低さのためにオサムシは同種であっても地域集団ごとに異なる特徴を維持しやすく,好適な生物進化の研究材料となります.例えば,九州においてヒメオサムシの体サイズは島によって異なります.これは幼虫期の餌となるミミズの群集構成が島間で異なっており,ミミズが大きい島では大きい幼虫の捕食成功率が高いためです.一方,北海道の美麗種オオルリオサムシの体色は地域によって大きく異なり,多型を示す集団も珍しくありません.しかし,その捕食者は夜行性のタヌキであり,体色に捕食回避の機能はなさそうです.今回のEZOゼミでは,こうしたオサムシの地理的変異と生態の関係を紹介し,オサムシが日本列島内でどのような多様化プロセスを歩んできたのかを考察していきます.

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