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狩猟採集民の子育てと子どもの生活世界
山内 太郎 博士(北海道大学大学院保健科学研究院/同大学環境健康科学研究教育センター・教授)
要旨
ヒトの成長パターンは他の霊長類と比較して独特であり、「長い子ども期」と「思春期成長スパート」が顕著である。出生後から2歳頃までは急激に成長速度が低下し、その後は緩やかな成長が続く。そして、思春期に入ると再び成長スパートが生じる。この成長パターンは、ヒトが社会構造や文化を発展させるための基盤と考えられる。子ども期は、言語や道具の使用、社会的ルールの理解など、人間としての基本的な能力を習得する重要な期間である。また、思春期には身体的・心理的変化が顕著になり、自我の確立や個性の発揮が促される。この時期には、仲間との協力や競争を通じて社会的な役割や責任を学ぶ機会が増える。
演者は1990年代よりアフリカ熱帯雨林で狩猟採集民の調査を行っている。狩猟採集社会では、子育ては母親だけでなく周囲の子どもや大人が協力して行う。カメルーンのピグミー系狩猟採集民の調査では、1人の乳児に対し、1日あたり母親以外に15.8人の子どもと大人が育児に関わっていた。この「育児協働」は、育児に関与する子どもにとっても社会的スキルを身につける貴重な機会となる。
狩猟採集民の子どもは、森での遊びを通じて狩猟採集活動を学ぶ。自然環境の中で命の循環を体感しながら、実践的で体験的な知識を獲得する。思春期スパート前の子ども期は、生活に必要な知識や技能を学ぶ時期であり、異年齢グループの活動を通じて知識が伝承される。思春期に入ると、身体の成長と精神発達のギャップが生じ、自我や創造性が発揮される時期となる。仲間との活動を通じて、社会的な役割や責任を学ぶ機会が増大する。
時間があれば、近年取り組んでいる世界の地域社会(日本、アジア、アフリカ)における子どもとサニテーションの仕組みの共創についても紹介したい。
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