top of page
生態学者・鳥類学者に対して、文化人類学者がどのように・どのような関心をもつのか
韓 智仁 さん(大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程 / 春風社 編集部)
要旨
文化人類学を専攻している私は現在、博士論文の調査として、北海道でシマフクロウ保全に携わっている方々へインタビューを行っています。ここで注目しているのは、「科学」の実践です。
国の保護増殖事業の対象種であるシマフクロウの保全においては、生態学や鳥類学の専門家の持つ科学の知識が重要な役割を持ちます。ただし多様な組織・個人が関わっているため、科学と社会が複雑に関係する局面も見られます。また一方で、この鳥の行動や生態の細かな記録や系統解析は、社会一般の関心や利害からそれなりに独立した領域でもあります。
研究者は森で調査し、研究室で解析を行い、研究資金を得るための書類を書き、市民への講演を行い、行政の会議に出て、学会に足を運び、論文に取り組みます。さてここでかれらは全体としていったい何をしているのでしょうか?どのような記述をすれば、この人たちの活動を総体を近似的に描くことができるでしょうか?またそこに、北海道のシマフクロウ特有の事情は何かしらあるでしょうか?私はこうした関心を持って自分の調査を進めています。
文化人類学者C.ギアツの言葉に、現地の人の「肩越し」にフィールドの事象を読み取る、というものがあります。生態学者・鳥類学者の肩越しにシマフクロウの保全活動を眺めながら私がなにを考えているのか、どうしてこの調査に至っているのかを、私個人や文化人類学という学問の関心や事情を紹介しながらお話しします。
bottom of page