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生物保全になぜ協働が必要か

有坂 美紀 さんCo.Design / RCE北海道道央圏協議会)

要旨

 

「環境問題」の解決とは、具体的に何が問題で、何を解決しようとすることなのか?

「持続可能な開発」は、環境問題の解決に向かう1つのキーワードとして特に1990年代から使われるようになった比較的新しい言葉です。「持続可能な開発」の定義は、1987年、国連「環境と開発に関する世界委員会」(ブルントラント委員会)が発表した「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」がもっとも一般的なものです。ただしこの時、①世界の貧しい人々の人間として基本的に必要なことを優先的に満たす、②先進国等からの過大な環境負荷を地球の収容力の限界内に収めるーという2点を考慮することが必須とされています。持続可能な開発という言葉1つ取っても、環境問題は非常に複雑であり、社会問題との繋がりの深いテーマであることが分かります。私たちが「環境問題の解決を目指す」という時、解決しようとする事象(テーマや場所など)によって、協働すべき相手や仕方はもちろん、「解決」とは何を指すのかに注目しなければ、根本的な解決は難しいのが現実です。環境問題を解決する糸口として、筆者がこれまでの実践の結果や考え方などをご紹介し、皆さんと「生物保全になぜ協働が必要か」について改めて考え、生態学あるいは生態学者が環境問題解決のために求められる意識の持ちよう、貢献の仕方などについて議論できれば嬉しいです。

 

演者紹介:

 有坂さんはESJ72生態学会大会の公開講演会「人と野生動物の共存」に招待され、科学コミュニケーションにおける「欠如モデル」を用いて研究者の在り方について重要な指摘をされました。有坂さんはG7サミットに市民の立場から意見提言する組織”C7(Civil 7)”のメンバーとしても活動されていますが、ESJ72大会の幾つかの講演を聞いて「まだ専門家と市民の間に大きなギャップがある」と痛感したそうです。このような経緯を踏まえながら、今回のEZOゼミでは、生物保全において研究者や市民、行政など異なるステークホルダーがなぜ、どのように協働すべきかを科学技術社会論、環境倫理学の観点からお話してくれます。

 有坂さんは学生時代にヤドカリの生態研究を行い、その後、新聞記者、震災ボランティア、中南米縦断、NGO、個人事務所設立、といった異色の経歴を持ちます。生物保全を目標にしながら、このようなキャリアをたどってきた経緯なども余すところなくお話しして頂きます。

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